韓国 社会矛盾と政治経済

一連の政治スキャンダルで財閥は巨額の寄付を行ったと非難され、サムスンの李在鎔副会長は懲役12年を求刑された。財閥3世ともなると1代目の苦労もほとんど記憶になく、傲慢性やモラルハザードが育つ一方、忍耐力や経営能力すら欠けかちであるという弊害が目立つという。政府及び財団への寄付自体については、歴代続けて行ってきた暗黙の了解であり、政府の配慮を得るために必要不可欠であったという見方も一理ある。しかし、李在鎔副会長にしても出社したのは1年に2回だったとか12回だったとか言われれば、国民の不興を買うのは当然であり、それらが考慮された地裁の判決は見物である。サムスンはグループ会社の再編と持ち株会社への移行を断念する傍ら、配当引き上げと自社株買いを行い、株主の機嫌をとっている。

 

韓国経済は好調を保っている。世界経済が安定→特に輸出が増えて一番恩恵を受けるのは貿易依存度の高い韓国であろう。半導体やディスプレイで圧倒的なシェアを持ち、ここ数年は大きな利益をあげている。一般的に半導体の周期は3~5年と言われ、新興国特に中国のキャッチアップという脅威もあるので繁栄が長続きするとも限らないが、中長期的に見ると半導体の需要は右肩上がりが予想されている。つまり、自浄能力と社会の需要にあった適応能力さえ維持できれば、当分の間サムスン王国(+LG?)は続くのかもしれない。

 

著しいスピードで先進国の仲間入りを果たした韓国ではあるが、社会矛盾という副作用もまた大きい。GDPは世界10~15位、一流企業を抱え、社会インフラは整い、治安も悪くない。一方で、高齢化と社会福祉の問題、若者の高い失業率、広がる格差、乏しい技術革新、政経癒着。これらの課題に大統領は一つ一つ向き合っていかなければならない。

文在寅大統領もまた財閥改革を標榜しているが、現実にはサムスングループの解体などはとてつもないリスクを伴う; 言ってしまえば出来るはずもない。現在のところ、財閥との距離を測りかねているようにも見える。所得税法人税の引き上げを行ったが、莫大な利益を上げる財閥に大きな影響は出ず、特に競争力の低下が起こるとは予想しない。しかしまた一方で現状に大きな変化をもたらすことも不可能なので、果たして高い期待をもった国民が納得するのか否か。公約に掲げた81万人の雇用創出などは対処療法に過ぎないと言われる。注目は予定される最低賃金の大幅な引き上げがいかなる化学反応を及ぼすのか、2012年~22年にかけて2~3倍の変化があるはずだ。

 

北朝鮮に対しては「対話」を呼びかけているが、成果は一向に出ず厳しい状況である。しかし、いくら進歩政権と言えども、事態をただ楽観的に考えていたはずもなく、今後も粘り強く「対話」を提唱し続けるのだろう。この路線は韓国の利益にかなっていると思う; 1. 彼らには中国と敵対する力はない。2. 最終的に統一も考えなければいけない立場。3. アメリカにも「対話」を必要と考える学者は多い。圧力のみで北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止できるのかと言えば、答えはノーでしょう。短期的に体制転換が起こり得ないと仮定しかつ北朝鮮に変化を期待するならば、それは韓国が行おうとしていたような赤十字なりの支援から民主主義の懐の大きさアピール→徐々に地方・民間へと拡散させることによって、下からの革命を誘発するもいう選択肢が一番実効性を帯びる。将来における安定的な統一政策も志向しやすい。

 

韓国の安全保障や政治経済を分析することは難しい。どの国においても情勢を理解するためには当該国の国民性を理解することが不可欠であるが、韓国においては特に大切であると感じる。例えば安全保障環境に関して、日中間において意見が異なっていても、国際政治を見る角度が似ているのでお互いの主張は理解しやすい。ただ、韓国においてはそもそもの前提から異なるので話が噛み合わないことも多い。市民レベルにおいても日本国民と似ているようで異なるのが韓国だ。日本の報道で頻繁に「国民情緒」などの言葉をよく聞いたが、それが唯一の韓国国民を代表する特徴であるわけでもない。

次なる目標は、今一度原点に戻り韓国と言う国を理解することにあるかなと思っている。