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北朝鮮 金正恩と国家思想

北朝鮮

北朝鮮の内政とは如何なるものか。本来は労働新聞等を読み、その国家思想を読み解くべきだろう。しかし、それらの研究は私の能力を超えるいるので、まず手引き書として『金正恩著作集』『金正恩著作集2』を読んでみた。

 

キーワード:金日成金正日主義、金正日愛国主義、経済建設と核武力建設の並進路線、咸南の炎、江界精神(→江原道精神)、千里馬運動(→万里馬速度)、馬息嶺速度、延吉爆弾精神

 

権力基盤に乏しく、白頭の血統という正統性に依存している金正恩体制のスタートが「金正日総書記を永遠に高くいただき総書記の遺訓を貫徹しよう」(2011年12月31日)であったことはある意味当然のことである。総書記の死後しばらくは、金正日総書記の個人崇拝・偶像化の強化に努めた(総書記の偉業を称え、金正日愛国主義を強調)。全社会の金日成金正日主義化という素晴らしい綱領を発明し、金日成主席のチュチェ思想金正日総書記の先軍思想の貫徹を訴えた。

この5年を前期・後期に分けてみると、前期では、金日成主席・金正日総書記の遺訓貫徹と継承に力を入れている場面が目立つであろうか。後期においては、全社会の金日成金正日主義化に加え、新たな色を加えようとしているようにも見えなくはない。しかしそれらは、万里馬速度や江原道精神であり、模倣品に留まる。

 

著作集は想像にも増して芸がない; というのも、新たな金正恩思想なるものが展開されている訳ではなく、ただ先人たちの偉業を引き継ぎ、貫徹をすることを主張することに留まっているからだ。○○しなければならない/○○すべきだ、という文章が永遠と続き、欠伸をしてしまう(→粛清された)のも理解できる内容である。

 

一般的な演説の流れは以下の通りであると理解した。

1. 金日成主席が、創造し指導した思想と業績を称える

2. 金正日総書記が、思想と業績を固守し進化させた偉業を称える

3. 金日成主席と金正日総書記を永遠にあおぐ→全社会の金日成金正日主義化

4. すべての部門、すべての単位で○○しなければならない/○○すべきだ。

5. わが党は百戦百勝・必勝不敗である

 

著作集からは、金正恩体制が非常に白頭山三大将軍の血統に正統性を負っているという当たり前のことが分かった。さらに言えば、現代人の感覚からは違和感あふれる内容・異常性ばかりが感じ取られた。権力継承から5年が経過したが、大枠を超えた方向性について著作集から何一つ感じ取ることが出来なかった事は残念である。

 

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朝鮮労働党第七回大会でおこなった中央委員会の活動報告(2016年5月6日、7日)

 朝鮮労働党第七回大会は、全社会の金日成金正日主義化の旗じるしを高くかかげて、わが党をさらに強化し、社会主義強国の建設とチュチェ革命の最後の勝利をはやめるうえで歴史の分水嶺となるでしょう。

一、チュチェ思想先軍政治の偉大な勝利

 チュチェ思想は世界的な大政治風波と重なる困難のなかで朝鮮革命をチュチェの道に導いてきた百戦百勝の旗印

 先軍政治はわが党と人民が難局を打開して歴史の奇跡を生み出せるようにした勝利の宝剣

(1)社会主義偉業の勝利的前進のためのたたかい

(2)強盛国家建設でなしとげた誇らしい成果

  • 一心団結の政治思想強国、不敗の軍事強国
  • 経済建設と文化建設

(3)革命偉業の輝かしい継承

金日成同志と金正日同志をわが党と人民の永遠なる領袖として高くあおぎ…

二、社会主義偉業の完成のために

(1)全社会の金日成金正日主義化

(2)科学技術強国建設

科学技術が経済強国の建設で機関車の役割を果たすべき

(3)経済強国建設、人民経済発展戦略

  • わが国は堂々と政治軍事強国の地位を占めましたが、経済部門ではまだ相応の水準に達していません
  • 人民経済の自立化と主体性を全面的に強化
  • すべての生産工程を自動化、知能化し、工場、企業を無人化する
  • 人民経済の各部門における科学技術と生産の一体化

国家経済発展五ヵ年戦略(2016~2020年)

 国家経済発展五ヵ年戦略の目標は、人民経済全般を活性化し、経済部門間のバランスをとって、国の経済を持続的に発展させるために土台をきづくこと。

  1. 電力問題の解決
  2. 石炭鉱業と金属工業、鉄道運輸部門の発展
  3. 機械工業、化学工業、建設部門と建材工業部門の転換
  4. 農業と水産業軽工業部門は人民生活向上の突破口をひらくべき
  5. 国土管理事業を力強く展開
  6. 環境保護事業を改善
  7. 対外経済関係を発展

(4)文明強国建設

  • 教育事業の発展
  • 保険医療事業の発展
  • スポーツ強国を建設
  • 社会主義文学芸術の全面的開花
  • 道徳的紀綱の確立

(5)政治的軍事的威力の強化

  • 党と人民大衆の渾然一体をいっそう強固にすべき
  • 人民軍の任務
  • 国防工業の発展

三、祖国の自主的統一のために

(1)祖国統一の三大綱領

  • 祖国統一十三大原則
  • 高麗民主連邦共和国創立法案
  • 全民族十大綱領

(2)六・一五宣言と十・四宣言

祖国統一の焦眉の問題は、北南関係を根本的に改善すること

(3)アメリカ―時代錯誤的な対朝鮮敵視政策

(4)対話と教商

 対話と協商は、北南関係で提起される問題を民族の念願と意思に即して解決するための基本的方途です。

四、世界の自主化のために

(1)帝国主義反動勢力との対立と闘争

アメリカ帝国主義

(2)世界の自主化を実現

帝国主義、支配主義勢力の侵略と内政干渉に反対

(3)非同盟運動の強化発展

(4)自主的な対外政策

  • 保有国の地位にふさわしい外交
  • 先軍の威力によって地域と世界の平和と安全を守らなければなりません
  • わが共和国の国際的影響力をさらに高め…

五、党の強化発展のために

 朝鮮労働党は革命的党建設の新たな境地をきり拓き、偉大かつ尊厳のある金日成金正日主義党として強化発展し、チュチェ革命偉業を輝かしい勝利の道に導きました。

  • ハンマーと鎌、筆
  • 形式主義の古い枠をやぶり、当活動で革新をおこさなければなりません
  • 権柄と官僚主義、不正腐敗運動とのたたかい
  • 党の指導的役割
  • 金日成金正日主義を唯一の指針
  • 党組織の役割
  • 党の思想活動を根本的に転換

自主性をめざす人民大衆の聖なる偉業、金日成金正日主義党の偉業は必勝不敗。

 

中国 全国人民代表大会

中華人民共和国

李克強総理の記者会見(3月15日)を聞いている。

全てを網羅している訳ではないが、以下の質問があった。

米中関係、成長率、自由・保護貿易、政府のガバナンス、イノベーション、香港、中露関係、為替レート・外貨準備高、構造改革・雇用、アジア太平洋地域における役割、経費節減・減税、台湾、朝鮮半島・・・

雇用、構造改革イノベーションに関する質問が多い印象。

香港に関しては、経済における相互依存関係を重視してみせた。

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出典:China.org.cn http://live.china.org.cn/2016/03/04/premier-li-keqiang-delivers-govt-work-report-at-12th-npc-session-4/

 

今回は、中国の内政について理解するため、第12期全国人民代表大会第5回会議「政府活動報告」を読みとく。日本の報道や前年の報告も参考にしつつ、中国政府の意図を理解する学習をしたい。

まず、当ブログの前記事で、政府活動報告(3月5日)の要点をまとめた。

http://blog.hatena.ne.jp/unotama/unotama.hatenablog.com/edit?entry=10328749687227523226 (English)

作業としては、前年度の政府活動報告についての要約も同様に作成し、それらを比較した。基本、英語版のreportを読み、所々で中国語版を参照した。演説(約1時間40分)を聞き、内容の把握に努めたが、アクセント等の理解力に欠けている事は同記事のLimitationである。また内容の誤読などの可能性があるが、その点については筆者の能力不足に由来する事で、ご容赦願いたいと思う。

Wall Street Journal China NPC 2017: The Reports - China Real Time Report - WSJ

 

それでは本題へと移ろう。「政府活動報告」by 李克強

はじめに変化した点

習近平同志を核心とする党中央

類似の表現を含めれば6度、習近平=核心であることが表明された。筆者はその演説で3~4度しか気付くことが出来なかった。重要なのは回数ではなく、李克強総理の演説の開始: 2016 WORK REVIEWの正に出だしから、6中全会において習近平総書記が党の核心と位置付けられたことを確認したという事実だろう。言い換えれば、昨年の政府の最も大きな活動が、習近平=核心であると表明しているようなものである。今年の習近平国家主席は1度もペーパーを確認しなかった、表情の変化もなく、張高麗並みのポーカーフェイスであった。

②雇用・環境問題の重視

前年に比べ"人民目線"の演説であったと感じる。それはGUIDELINES FOR 2017の5項目で「社会的関心の問題の解決」を謳っていることからも分かる; 管見の限り、ここまで直接的な表現は昨年度の演説に見当たらない。

雇用について、ここ1年で、退役軍人のデモ等が表面化したこともあり、政府が同問題に対してより重視して取り組む姿勢を見せたと言える。employという単語で検索する限りでは26→29回と頻出度に前年と有意差を得ることはできなかったが、2016 WORK REVIEWの主要達成項目に雇用の創出を挙げ、2017年においても目標の1つ、また最頻出単語でもあることから、相変わらず、より重視している項目であるとみなすことができる。

環境問題においても、それらの強調は顕著で「青い空を取り戻す」という宣言は、前年とは違い直接的であり、スモックについての言及も1→3回と増えた。自動車等の排出ガスのコントロールを強化することにも力点が置かれ、人民配慮の環境対策に取り組むことを表明した。

③香港・台湾への圧力強化

一国二制度の堅持・台湾独立の阻止、では確かに文言が強められ、重きを置かれたように見受けられた。従来の1992年コンセンサスに加え"一つの中国"原則に関する言及もあった。ただし、記者会見では終始、経済関係を強調した無難な発言をしていたと思う。

 

次に前年と変わらない点

供給サイドの構造改革国内需要の喚起

前年同様、過剰生産能力の改善・ゾンビ企業の整理を問題として抱えている。MAJOR AREA OF WORK FOR 2017の1~2、4~5項目は改革(変革・イノベーションを含む)の推進がメインである。3項目が国内消費・投資、都市化等の問題に該当する。権威人士の問題(巷で言われる習近平李克強の対立)は全人代の政府活動報告に大きな影響を及ぼしていない。

・Challengeについて

多くの困難に直面しているという表現が昨年同様複数回用いられた。保護主義批判を匂わす言い回しもあったが、世界情勢全般の傾向を意識しての事だろう。

・法に基づく政治・政策

法の整備と法に基づく判断、法治国家の整備を進めていることをアピールしている。おそらくlawという単語が演説で最も多く発せられた名詞ではないか。

・農業及び貧困問題への言及

貧困層を1000万人減らし、補助金を30%増額する。(都市化と都市への移住促進)。農業の現代化と田舎におけるインフラ整備、組合や協会の創設。等

・拍手の頃合いー余談

全く分からない; 人民の生活に関連する発言の後に拍手が起きているような気もするが。全人代の代表は内容の要点を理解しているのだろうか。今年一番全人代が沸いた瞬間は携帯のローミング・長距離料金廃止を明言した時だった。李克強総理も戸惑っていた様子だった。

 

その他

2016年の政府活動報告は少々特殊で第12期五ヵ年計画の成果と第13期五ヵ年計画の説明に時間が割かれた。今年はそれらを言及する必要がなく2017年の政府活動の計画に多くの労力が費やされた感じがした。

民族衣装を着た人達が目立つ。欠伸をする人もいる。

演説時間は約1時間53分→約1時間40分に減少。

文字数16600→15700字(英語)19600→18800字(中国語)

産経の記者は記者会見に参加できなかった⇔日経の記者は中国語を誉められた。

 

以下参考まで

2016年の目標と達成具合 & 2017年の目標

1. GDP成長率6.5~7%→6.7% 6.5%以上

2. 消費者物価指数上昇率3%前後→2.0% 3%前後

3. 都市部における雇用の創出1000万人以上→1314万人 1100万人以上

4. 都市部における失業率4.5%以内→4.02% 4.5%以内

5. 総輸出輸入の着実な増加→記載なし(6.8%減) 同左

6. (安定的な)基礎的国際収支→記載なし(経常収支2014億ドル) 同左

7. 個人所得の増加→記載なし(不明) 同左

8. GDP当たりのエネルギー消費を3.4%減少→5%減 3.4%減

9. 主要汚染物質の排出の更なる減少→二酸化硫黄5.6%や窒素酸化物4%の減少、PM2.5は9.1%低下。 同左

 

 

CHINA NPC 2017: Gov't work report

中華人民共和国

REPORT ON THE WORK OF THE GOVERNMENT

Delivered at the Fifth Session of the 12th National People's Congress of the People's Republic of China on March 5, 2017

Li Keqiang

Premier of the State Council

 

政府工作报告

2017年3 月5 日在第十二届全国人民

代表大会第五次会议上

国务院总理李克强

 

  • 2016 WORK REVIEW

Economy performed stably with good momentum for growth

  GDP reached 74.4 trillion yuan, representing 6.7% growth

Employment growth exceeded projections

Continued advances made in reform and opening up

Economic structural adjustment stepped up

New drivers of growth gained strength

Infrastructure became ever-better able to sustain development

Living standards improved

  China successfully hosted the G20 2016 Hangzhou Summit

  Reform entered a critical stage

  • MAIN WORK IN 2016

1. Economy performed within an appropriate range

2. Five priority tasks to improve composition of supply

3. Deepen reform and opening up, strengthen vitality of development

4. Strengthened leading role of innovation

5. Promoted more balanced development

6. Strengthened ecological conservation

7. Gave particular attention to improving living standards

8. Enhance government performance and improve governance

  Outstanding achievements in diplomacy in 2016

  95th anniversary of founding CPC

  80th anniversary of victory of Long Marc

  • GOVERNMENT PLAN FOR 2017

 19th National Party Congress to be held

  • TARGET FOR 2017

GDP growth of around 6.5%

Ensure employment and improve people’s lives

Pursue a proactive fiscal policy and a prudent monetary policy

Government budgets should highlight priorities

Governments at all levels should tighten their belts

Pursue a prudent and neutral monetary policy

  • GUIDELINES FOR 2017

1. Make progress while maintaining stable performance

2. Focus on supply-side structural reform

3. Expand aggregate demand

4. Rely on innovation, promote more structural upgrading

5. Solve prominent problems of public concern

  • MAJOR AREA OF WORK FOR 2017

1. Pushing ahead with five priority tasks through reform

 ・Take solid and effective steps to cut overcapacity

 ・Cutting excess urban real estate inventory

 ・Carry out process of deleveraging in an active, prudent manner

 ・Take multiple measures to cut costs;

    Overhaul government-managed funds, abolish municipal public utility surcharges

    Abolish or suspend 35 charges enterprises pay to central government

    Reduce government-set operating fees for businesses

    Lower as appropriate enterprise share to social insurance, housing provident fund

    Reduce government imposed transaction costs; lower energy & logistics costs

 ・Take targeted measures to strengthen areas of weakness

    Reduce number of rural residents living in poverty by over 10 million

    Central government funding for poverty alleviation will be increased by over 30%

    Different rural development funds will be merged in poor countries

2. Deepening reform in major sectors & key links

 ・Continue to transform government functions

 ・Continue to reform fiscal & tax systems

 ・Advance reforms in the financial sector

    Make financial institution’s service accessible to small & micro businesses

    Encourage large & medium commercial banks to establish inclusive financial debts

    Strengthen role that rural credit cooperatives play

    Deepen reform of the multi-tiered capital market

    Systemic risks under control, must be fully alert to build-up of risks

 ・Speed up the reform of SOBs and state capital

    Advance reform in the power; open competitive operations to private sector

    Improve and strengthen regulation of state assets

    Do more to energize the non-public sector

    Improve property rights protection system

    Make a big push for progress in the reform of the social system

    Deepen institutional reform to build a sound ecological environment

3. Do more to unleash the potential of domestic demand

 ・Promote a steady increase in consumer spending

 ・Work proactively to expand effective investment

 ・Improve planning for regional development

 ・Take solid steps to pursue a new type of urbanization

4. Transforming & upgrading the real economy through innovation

 ・Strengthen capacity for making technological innovations

 ・Accelerate development of emerging industries

 ・Endeavor to transform and upgrade traditional industries

 ・Continue to encourage people to start businesses, make innovations

 ・Take comprehensive steps to improve product quality

5. Promoting development of agriculture and increasing in rural incomes

 ・Push forward with structural adjustment in agriculture

 ・Boost the development of modern agriculture

 ・Deepen rural reforms

 ・Step up development of public facilities in rural area

6. Expanding China’s opening up to the world

 ・Making a solid efforts to progress Belt & Road Initiative

 ・Ensuring the steady growth of foreign trade

 ・Improving the environment for foreign investors

 ・Better facilitating international trade and investmen

7. Continue to try to protect the environment

 ・Make sky blue again

    Work on upgrading coal-fired power plants

    Taking measures to tackle the sources of pollution

    Strengthen controls over vehicle emissions

    Taking steps to tackle heavy air pollution

    Strictly enforcing environmental laws and regulations

 ・Controlling water and soil pollution

 ・Moving forward with ecological conservation

8. Promoting social development and improve people’s wellbeing

 ・Creating more jobs and business start-ups

 ・Ensuring people have access to equitable, quality education

    Pilot reform of college entrance exam

 ・Making more progress in building a Healthy China

    Increase subsides for basic health insurance

    Promoting partnership between medical institutions

    Increase subsides for basic public health services

 ・Working for ways to ensure people’s wellbeing

    Raising basic pension pavements

    Ensuring “left-behind” children are cared for

 ・Developing cultural programs and industries

 ・Exploring new forms of social governance

    Making basic cultural services more equitable

    Continue to pursue the Peaceful China initiative

 ・Ensuring workplace safety and protecting lives.

9. Strengthening the all-around improvement of government

 ・Fully advancing China’s law-based governance

 ・Maintain ethical conduct and moral integrity at all times

 ・Encouraging strong work ethic and enterprising sprit

Increasing support in mainly ethnic minority regions

 ・Fully implementing Party’s policy concerning ethnic minorities

 ・Protecting the legitimate rights of overseas Chinese nationals

Deepening reforms in national defense, armed forces

 ・Promoting innovation in defense-related science and technology

Continuing with principle of “one country, two systems”

 ・Supporting the economic development of Hong Kong, Macao

 ・Elevating position of Hong Kong, Macao in China’s opening-up

Upholding One-China principle, safeguard 1992 Consensus

 ・Maintaining peaceful growth of cross-Straits relations

 ・Firmly advancing process of the peaceful reunification of China

Standing on the side of peace and stability

 

韓国 "分裂"の考察

大韓民国

朴槿恵大統領が罷免された。

崔順実への怒り・光化門における「ろうそく」デモは想像を絶する推進力を生んだ。一方で、朴槿恵大統領を支持・「太極旗」デモも日を追うごとに勢いが増した。

李貞美所長代行の冒頭供述「国論分裂と混乱が終息することを望む」は弾劾政局が韓国一国にもたらした対立とそのダメージの大きさを物語っている。

しかし、なぜ対立・分裂がここまで激化したのだろうか。

ここでは、考察の手掛かりとして専門家の方々が先行研究及びメディアで表明されてきた4つの「対立」; ①地域対立イデオロギー対立③世代間対立④「制度圏」と「運動圏」の対立、を取り上げる。

 

①地域対立(慶尚道、嶺南ー全羅道、湖南)→△

著名な先行研究として、

・森康郎『韓国政治・社会における地域主義』(社会評論社、2011年)

・梅田皓士『現代韓国政治分析ーー「地域主義・政党システム」を探る』(志學社、2014年)

が挙げられる。両者とも過去の大統領選挙、総選挙の投票データを分析し、地域対立の有無を考察している。経済・社会的要因に関しても考察を加える。一般に、1971年の大統領選挙(朴正煕vs金大中)を除くと、地域主義が芽を吹いたのは民主化以降; 特に金泳三と金大中の対立が地域主義的投票行動を生んだとされる。

現在においても、地域主義的傾向は一定程度見られる。昨年の総選挙では形勢不利と見られた国民の党(旧金大中派)が光州・全羅南道でほとんどの議席を確保、黄教安大統領代行は大邱慶尚北道で文在寅元代表以上の支持を得ている(2017年2月3~4日、ハンギョレ・リサーチプラス)。

しかし、なおそれでも地域主義は従来に比べると薄れていると言えるだろう。昨年の総選挙では、金富謙が保守の地盤とされる大邱議席を得た。李貞鉉元セヌリ党代表は全羅南道出身で秋美愛共に民主党代表は大邱出身だ。朴槿恵弾劾政局では大邱を含め、嶺南でも支持基盤が崩壊→下野要求運動が起こった。

いまだに、選挙においては地域主義的投票行動がデータとして表れている。しかし、それらは朴正煕→朴槿恵・金泳三・金大中という人物中心の地域主義であるという認識が成り立ち、徐々に色が薄まっていくことが予想される。先の意味において、地域主義的対立は深刻ではないと解釈することが出来る

イデオロギー対立(保守ー進歩)→○

一見すると、韓国の保守ー進歩対立はとてつもなく大きく見える。しかし、見方を変えれば、そうではないと言うことも可能だ。

まず、そもそもの韓国の保守ー進歩をどうとらえるべきかと言う問題がある。

木宮先生は「保守派と進歩派の分裂は、日本の1955年体制の保守と革新ほどの違いはないが、韓国では大きな違いと認識されているのが現状」であると説明する。

パストリッチ慶熙大学副教授は「米国の場合、進歩と保守の基本的な思考方式はあまりにも違うので対話はまず不可能」であると述べ、全員一致の罷免という決定に韓国の特殊性を感じたようだ。

言い換えると、両者ともイデオロギー対立は一般的理解と比べて大きくないという立場だ。

次に、将来における対立の解消可能性という問題がある。

知り合いの大学院生によると、韓国において自由主義的言論空間が発達しなかったことが問題であると言う; 大韓民国建国の際の左派排除→半権威主義体制下で極右の言論に統一され、それに対抗した80年代のNL・PDは極左である。概して自然であるが、民主化以前に中道路線は存在せず、右左というイデオロギーだけが顕著に表れる状態が民主化以降も残存した。

こうした文脈において、安哲秀旋風と第三極の出現は韓国政局の新たな変化である。現在、"anything but 朴槿恵"が文在寅候補の背中を押し、第三極はその勢いに陰りを見せているが、長期的に見て、中道の躍進の可能性は十分に残されている。

つまり、イデオロギー対立は国民認識レベルの問題として大きな壁として存在するが、政治実際レベルでは解消不可ではないと解釈することが出来る

③世代間対立(若者、20~30代ー高齢者、50代以上)→◎

 世代間対立が最も根の深い対立問題であると言えるのではないか。世代間対立は主として盧武鉉大統領登場と共に現れた。理由は2つ; 1) 三金に対する新世代の象徴として国民が彼の進歩的思考に期待した、2) 相対する李会昌が旧世代の保守を代表する人物だったからである。

その後、20年が経過するが、保守ー高齢層、進歩ー若年層という傾向は韓国経済の相対的停滞と若年層の不遇という媒介変数を加え、むしろ増大しているように見える。「ろうそく」デモと「太極旗」デモは若者 vs 高齢者という構図を象徴していた。

筆者の知る限り、世代間対立に関する先行研究はあまり存在しない; 同分野における研究が急がれると思う。若者 vs 高齢者という構図の原拠、固定化について究明される必要があるだろう。

ともあれ、現在見受けられる世代間対立は解消の見通しが立たない。ほぼ全ての若者が朴槿恵大統領の罷免に歓喜したという事実は軽視できない。

④「制度圏」(政府、議会、政党政治)と「運動圏」(知識人、学生)の対立→○

小此木先生の卓越した分析軸である。だが、少々古い印象を受けないでもない。

小此木先生は今回の弾劾の過程で、国民の支持が「運動圏」に一気に傾いたことを韓国政治の変化としてあげる。「軍事独裁政権のもとで形作られた「制度圏」と「運動圏」の分断と対立が今回、かつてないほど極端に噴出した」と述べられているおり、それらはイデオロギー対立と大いに重なる部分もあるのではないかと感じる。国民の支持が一時的に、進歩=「運動圏」に傾いたと理解できる。

政治的イデオロギー対立の見方と異なる点は、「制度圏」に対する「運動圏」の優位性はより長期的に持続する可能性が高いということだろう。そして「運動圏」は歴史的に見ても、弾劾政局から判断しても圧倒的進歩勢力である。つまり、国民の支持が「運動圏」に傾き続けるならば、進歩派の優位が当分続くと言うことになるだろう。しかし、中長期的にはどうだろう;「運動圏」の成功条件は焦点の統一&短期決戦であり、それらのためには何かしらの国民を揺り動かす出来事が絶えず必要ということにもなり得る。

 

以上、4つの「対立」について論評を加えてみたが、果たしてこれらの分析軸(単独またはミックス)で韓国の国論分裂は説明できるのだろうか。それとも、4つの「対立」以外の新たな対立軸の発見が必要なのだろうか、上記のコメントを参照にして考えていただけたら幸いである。

 

日本・韓国 慰安婦問題: 後編

日本 大韓民国

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②12・28合意とその後

急転直下の12・28合意と書いたが、基本的枠組みは「佐々江案」であると言われている; つまりは、野田ー李明博政権期に基礎を置いているということだ。次に、実質的な交渉が谷内正太郎ー李丙琪ラインで為された。朝日新聞の箱田編集委員は「ワーディング」に時間を費やしたという表現をされていた。長期にかけて辛抱強く交渉を続けた結果でもある。

次に合意の特徴・評価をまとめる。

  • 合意の特徴

1. 慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。

日本政府が「軍の関与」を認めている、「責任」を痛感しているとし、法的責任・道義的責任とも言っていない。

2. 安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。

内閣総理大臣という資格で、公式に謝罪をした。

3. 今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。

日本政府の予算による一括支出であることを明確にした。

4. 今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。

最終的かつ不可逆的であるという両政府の確認。

5. 韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する

慰安婦像の移転は努力義務である。

  • 合意に対する評価

+: 両首脳間で合意が得られたこと; ハルモ二が生きている間に補償を行うことが可能になった。

+: 合意は佐々江案よりも進展している。

+: 日韓のメディアは合意を歓迎、日本のほぼ全ての政党が合意に肯定的。

-: 根回しの不足; 被害者・関連団体の反発。

-: 日本政府による「戦争犯罪」が認定されていない、「法的責任」が明記されていない。

-: 慰安婦像/少女像の移転に言及; 努力義務に対する日韓双方からの批判。

 

合意における最終的かつ不可逆的であるという文言には日韓双方の思惑が込められている。最終的というのは日本の希望であり、不可逆的というのは韓国の要請でもある。日本としては、慰安婦問題を度々蒸し返されることに対する不満があり、合意をもって終わりであるという意思があった。一方、韓国としては度重なる日本側の「妄言」に不満があり、繰り返させないという意図があった。

 

現在のところ、合意自体は着実に実行されている。しかし、中身が伴っていない。

12・28合意後、日韓で何が起こったのか、整理してみよう。

2015年12月28日: 日韓合意

2016年1月14日: 桜田義孝; 慰安婦は「職業としての売春婦だった」

2月25日: 稲田朋美; 慰安婦像は「撤去していただくことが前提」: 10億円の拠出条件

4月13日: 韓国総選挙→セヌリ等の惨敗

5月31日: 慰安婦財団準備委員会が発足→法的責任と10億円の関連性について、金兌玄理事長の発言にブレ

6月9日: 挺対協など「正義・記憶財団」を設立

7月10日: 参議院選挙→自民党勝利

7月20日: 「言論NPO」と「東アジア研究院」による世論調査慰安婦合意について、日本側「評価する」47.9%「評価しない」20.9%、韓国側は「評価する」28.1%「評価しない」37.6%

7月28日: 韓国政府「和解・癒し財団」を設立; 乱入劇→金兌玄理事長にカプサイシンスプレー

8月24日: 日本政府10億円拠出を閣議決定

8月30日: 元慰安婦13名が韓国政府を相手に1人当たり1億ウォンの賠償を求めてソウル中央地裁へ提訴

9月7日: 日韓首脳会談: 合意を引き続き誠実に実施していくことで一致

10月3日: 安倍首相、お詫びの手紙について「毛頭考えていない」と否定

10月11日: 「和解・癒し財団」、慰安婦被害者への支援金申請受付を開始(生存者: 1億ウォン、故人: 2000万ウォン)

12月9日: 朴槿恵大統領の弾劾訴追案が可決

12月23日: 合意当時の存命の方々46人の内34名が支援金受け入れ。

12月30日: 釜山の日本総領事館前に新たな慰安婦像の設置

2017年1月9日: 長嶺駐韓大使が一時帰国

 

パットナムのTwo-level game theoryを参照すると、外交交渉における合意は"Win-sets "(お互いが国際・国内レベルにおいて受け入れ可能な内容)の範囲内で行われるという。2015年末の慰安婦合意はまさしくギリギリの"kinky win-sets"の上で成り立った合意であると言えよう。しかし、日韓両国は合意以後、その精神から徐々に遠ざかってしまった。

 

自民党内からの軽率な発言(それは必ずしも誤ったものではないが)1月14日→桜田義孝、2月25日→稲田朋美、10月3日→安倍首相は韓国の世論悪化を招いた。7月28日の記者会見場乱入劇とカプサイシンスプレーの噴射は日本人に異質感を醸成し、悪い報道効果を生み出した。陳昌洙の言う"雰囲気づくり"に失敗した韓国では合意が着実に実行されているものの、日本政府が重視していた慰安婦像移転の努力義務を果たすところまでは叶わず、合意の履行の途中に朴槿恵大統領の弾劾が可決した。合意そのものがギリギリであり、元々危ぶまれていた履行が、朴槿恵セヌリ党の退場とともに更に難しくなったと日本人は感じている; 追い打ちをかけるような釜山ー日本総領事館前の新たな慰安婦像の設置とその認可及び放置は合意の破棄に近い意味合いを持った、という日本の世論が安倍政権の長嶺駐韓大使が一時帰国→長期化という結果を招いたのだろう。

 

ここまで慰安婦問題に関して過去の経緯と厳しい現状を振り返ってみた。

それでは、今後どのような措置が望ましいのだろうか。

まず日本側から、

1. 長嶺駐韓大使を帰任させる。大使の不在は幅広い交渉ツールの放棄に等しい。慰安婦問題に関して、厳しい韓国世論は放置していても何も変化しない; むしろ悪化させるだけであり、それらが若者を支えられていることを考慮すると、後回しという手段は将来の日韓関係に悪影響をもたらすだけである。

2. 適切な地位にある者の、ハルモ二に対する謝罪文の読み上げもしくは手紙伝達。細かい事実関係はともかく、加害者の立場として誠意のある謝罪の態度を見せる必要がある。ただし、それを釜山の慰安婦像設置とリンクさせない注意も必要だ。

次に韓国側へ

1. 釜山の慰安婦像を撤去慰安婦合意においてはハルモ二の名誉と尊厳の回復が最も大切である。しかし、大きなフレームワークで考えたとき、「外国公館前に造形物などを設置するのは国際的な プロトコル(外交儀礼)に鑑み適切ではない」と発言した尹炳世外相の認識は正しい。日本国民が慰安婦問題を超越した"挑発"と捉えていることを踏まえれば、公館付近の慰安婦像設置は国内変数を加えたとしても正しくない。

2. 研究報告書の周知。すでに白書としての公表は見送られ、民間の研究報告として取り扱われることが決まっているが、専門家の良識のある意見もしっかり取り入れるべきである; 慰安婦の研究等々彼らが一番情報を持っている。

双方に

1. 元慰安婦の方々との直接対話。慰安婦関連のセッションに参加した際に感じたのは運動団体の影響力である; 慰安婦をサポートする日本の市民団体の主張は強く、残念ながら妥協の余地がないと感じさせた。挺対協含め、彼らの活動は25年に渡り、要求を下げることが不可能に近い事は理解できる。だが、元慰安婦の方々が高齢であり、補償金を受け取る意思を示した人数を考えてみると、相違があったとしてもおかしくない。

2. 政府関連団体によるフォローアップ

アジア女性基金の際、償い金を受け取ったハルモ二は名誉回復どころか、逆に立場を悪くした。今回は「和解・癒し財団」からの治癒金ということで、受け取りやすくなっているとは思うが、慰安婦合意によって拠出されたお金を受け取ることで、白い目で見られるといった事態があってはならない。プライバシーを考慮しつつ、彼らの最後を政府が見守り・管理することは、被害者の方々が高齢であること・問題の大きさを考慮すると、大切であると思う。

3. 象徴的な事業: 歴史を繰り返さないという教訓

ドイツと日本を単純比較することは避けたいが、ワルシャワでひざまづいたブラントとヴァイツゼッカーの演説は和解の"象徴"だ。日本政府と韓国政府には声明以外の部分での"最終的かつ不可逆的解決"が求められているのではないか。日本国民・政府は反発するだろう、そして現在ある「和解・癒し」財団は個人への治癒金がメインである。しかし、それらを一歩超えて将来へとこの問題を引き継がせない意思が必要だ。12・28合意は始まりでも終わりでもない、問題を解決させる途上の合意である。

 

日本・韓国 慰安婦問題: 前編

日本 大韓民国

今日は三一節。韓国では新年度がスタートします。

そして、今日の水曜集会は大規模デモになるようで、一部では1000人が集まると報道されていた。慰安婦問題が相変わらず日韓関係をくすぶっている; 長嶺駐韓大使が一時帰国してから1ヶ月半、帰任する雰囲気にない。

今後、朴槿恵大統領の罷免可否が争点になり、慰安婦像の移転問題が進展するとは考えにくいため、一時帰国が更に長引く可能性も高まってきた。

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今回は慰安婦問題について所感を述べたい。以下、①慰安婦問題をめぐるこれまでの経過(前編)②12・28合意とその後(後編)、に分けて考える。はじめに、慰安婦問題を深く議論するに当たって、過去の経緯を理解することが一層求められていると思う; なぜなら90年代慰安婦問題が過熱した時のことを知らない世代が増えており、議論が感情的になりがちでもあるからだ。次に、12・28合意後の動きにも目を通す; 当然のことながら現在の大使一時帰国長期化という異常事態に直結しているからである。

 

慰安婦問題をめぐるこれまでの経過

先行研究として、千田夏光、金一勉の著作他があるが、慰安婦それ自体が日韓の懸念問題として姿を現したのは、1990年1月、尹貞玉教授がハンギョレ新聞に「挺身隊の足跡」の連載を始めてからだ。11月には韓国挺身隊問題対策協議会が設立された。大きく事態が動いたのは1991年8月14日、金学順が記者会見を行い、実名を名乗り、いわゆるカミングアウトを行った。12月6日、元慰安婦3名によって東京地裁への提訴がなされ、同日会見で質問を受けた加藤紘一官房長官は「政府関係機関が関与したという資料はなかなか見つかっておらず」という答弁をした。それに対して韓国政府は真相究明を要求し、12日、日本政府が関係省庁に慰安婦問題の資料調査を命じることになる。翌年1月には宮澤喜一首相の訪韓を控えており、早急な対処が必要とされていた。

一般に、首脳会談では何かしらの成果を挙げる必要がある。しかし、慰安婦問題に対しては準備期間が1ヶ月しかなく、事務レベルにおける折衝が不足していたことが想像される。また、朝日新聞が1月11日「朝鮮人従軍慰安婦への軍関係資料発見」という表題で、吉見義明教授が日本軍の関与を示すとされる資料を提示したことが、「関与した資料がない」とした日本政府の見解を覆した。後に、秦郁彦は首脳会談の5日前に起こった同報道を、「朝日新聞の奇襲」と呼んでいる。公式見解の修正を余儀なくされた日本政府の対応は1月13日、加藤官房長官の談話へと繋がった。ちなみに水曜デモの第1回が1月8日に行われている。

1992年1月16日~17日の宮澤訪韓は「謝罪外交」であったと言えよう。首脳会談の争点は韓国の対日貿易赤字であったが、日本政府に譲歩の意思がなかったため、盧泰愚としては、慰安婦問題を追及しなければならなかったという側面もあった。盧泰愚政権がレームダック化しており、三金時代の真っ最中、特に民主自由党内における勢力争いも影響したとされている。一方、日本政府はここまで大事になると予想していなかった。それは石原信雄副官房長官が「ざっくりと」謝ってしまえば済むと認識していたことからも伺える。しかし、この平謝りが韓国側の反発を生む一因ともなった; なぜなら、繰り返しのお詫びの表明と同時に補償の意思を示さなかったからだ。挺隊協は誠意のある謝罪&法的賠償→名誉回復を求めており、宮澤内閣の対応は彼らの水準を全く満たしていなかった。日本政府は「1965年条約で解決済み」であると言い、韓国政府は「請求権協定には該当しない、慰安婦は例外」と述べる、同構造は92年1月に形作られた。

ただし、韓国政府が常時、日本政府に法的責任を認めた上での賠償を求めていた訳ではない。例えば、金泳三大統領は、強制連行したという事実認定のみでOKだという姿勢を示していた。そして河野談話では狭義/広義という議論はあるにせよ、軍の関与を認めることなった。実際、韓国政府は同談話を「日本政府の努力を評価し、受け入れる」「わが政府の立場に相当な水準まで反映したもの」であると評価しているし、「今後、慰安婦問題を両国間の外交懸案として提起しない」とまで述べている。しかし、韓国の関係団体は談話に批判的であり、外交問題としては解決したように見えた慰安婦問題は、直後に成立した細川内閣以後もくすぶり続けることになる。また、同タイミングで成立した内閣が55年体制終結を告げる非自民内閣であり、運動体に期待を抱かせた→要求水準を高めたことも深刻なズレが生じる要因となった。

村山富市政権は、歴代日本においても最も歴史認識問題の解決に前向きに取り組んだ内閣であったと言える。戦後50年という節目に行った村山談話で有名であるが、「お詫びと反省の気持ち」を具体化→アジア女性基金の発足にも貢献した。また、同時期の傾向として抑えなければならないポイントが2点ある。第一に、保守の反発; 戦後50周年の国会決議に反対した。第二に、慰安婦問題の国際化; 1996年1月のクワラスワミ報告、1998年6月のマクドゥーガル報告は日本の対応を非難した。

村山内閣: 自社さ連立政権では、いわゆる「妄言」も相次いだ。多くは自民党から為されており、橋本龍太郎渡辺美智雄侵略戦争韓国併合に関わる発言で村山内閣の足を引っ張った。究極的には、村山自身が「日韓併合条約は法的に有効に締結された」と発言し、韓国政府: 金泳三大統領を怒らさせた。金泳三は94年10月時点において、補償を求めないという姿勢を堅持していた; アジア女性基金の事業に対しては困惑していたと言われているが、それでも善意で行う分には問題がないという立場だった。しかし、相次ぐ妄言は、金泳三政権の態度を硬化させ、アジア女性基金を認めないという認識に至るようになった。アジア女性基金が"失敗"した大きな理由の1つである。

アジア女性基金は被害者個人に償い金200万、医療福祉支援として300万、合計500万円が支給される事業であった。国々によってそれらの支給方法は異なるが、韓国の被害者の方々には、最終的に500万円が個人に支払われている。しかし、実施は60(+1)人にとどまり、登録被害者の1/3程度だったと報告されている(総数は1993年: 162人→現在239人)。

なぜアジア女性基金が失敗に終わったのか。熊谷奈緒子(2014)は以下4つの理由を挙げる。

①広報の仕方、②話題先行と調査不足、③募金の仕方、④活動の仕方。

当事者として関わった和田春樹(2016)は以下のように述べる。

「国民募金で「償い金」を支払うという基本コンセプトに問題があった、これが「政府の責任回避をあらわすとして」、被害者と運動団体に受け入れられなかった」。

象徴的な出来事は 1) ハッキリ会の臼杵敬子さんに韓国入国禁止措置が取られたこと; 本来は慰安婦に寄り添う立場の方だ、2) 金大中政権において、対抗措置さながら被害者補償が行われ、しかもアジア女性基金を受け取らないと誓約したハルモ二が対象とされたこと; アジア女性基金の意義を消失させる試みであった。

基本的な構図は金泳三・金大中政権期以降、変わらない1998年、小渕ー金大中間で交わされた「日韓共同宣言―21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」では慰安婦問題が巧みに回避された印象を受ける。2005年、盧武鉉政権は、「慰安婦、サハリンの同胞問題、原爆被害者の問題は請求権協定の対象ではなかったため、日本政府に法的責任がある」と韓国政府の立場を改めて明確にしたが、大筋として金泳三ー村山政権期以降、道徳的責任において慰安婦問題を解決することはできないという韓国側の主張に変化はないと言えるだろう。

2011年8月、韓国の憲法裁判所は、「韓国政府が日本政府に対して日韓請求権協定に基づいた解決を図る具体的な努力を怠っていること」に対して憲法違反であるという判決を下した。時の李明博政権は野田首相に対して、慰安婦問題に関し強く出ることが求められ、12月の日韓首脳会談では野田ー李明博、両者が正面衝突した。李明博大統領は野田首相に"決断"を促したが、野田首相は反論とばかりに慰安婦像の撤去を求め、交渉は決裂した。翌年、李明博大統領は竹島/独島に上陸し、天皇に関する発言もあって、日韓関係は悪化した。

2012年末、第二次安倍内閣が発足した; しかし、河野談話の見直しを含め歴史修正主義的見解を当初維持したため、日韓関係は低空飛行。2013年、朴槿恵大統領が慰安婦問題の進展を首脳会談の前提に置いたこともあり、過去最低とも言われる日韓関係に陥った。象徴的だったのは天安門城楼の上に並ぶ、朴槿恵習近平プーチンの写真。2015年は日韓国交回復50周年という記念の年であったのだが、関係修復の様相もなく、関係者の方々は大変な1年を過ごしたに違いない。それ故、急転直下の12・28合意は驚きであった。

 

台湾 政治人物調査

中華民国

今日という日は1947年2月28日から70年。台湾では非常に大切な記念日でしょう; 二・二八事件から70年が経過した。蔡英文政権にとっては初めての大きな記念日となります。

 

今回は、台湾に関連する物事として、TVBS: 国内主要政治人物声望調査(2/9~2/14)を総覧する。

  陳菊 頼清徳 鄭文燦 柯文哲 林佳龍 宋楚瑜 朱立倫 陳建仁
満意 62 58 50

50

46 42 38 36
不満意 17 17 13 28 20 26 27 26
                 
  蘇嘉全 馬英九 蔡英文 林全 洪秀柱 黄國昌 李登輝  
満意 35 33 29 27 27 24 23  
不満意 31 36 47 45 45 48 38  

出典:TVBS 民意調査中心 http://other.tvbs.com.tw/export/sites/tvbs/file/other/poll-center/0602091.pdf

 

例えば、以下の傾向が見受けられる。

1. 民進党系の市長がトップ5を独占

No.1 陳菊(高雄市長)、No.2 頼清徳(台南市長)、No.3 鄭文燦(桃園市長)、No.4 柯文哲(台北市長)、No.5 林佳龍(台中市長)

2. 政権中枢の支持率は今一つ

No.8 陳建仁(副総統)、No.9 蘇嘉全(立法院長)、No.11 蔡英文(総統)、No.12 林全(行政院長)

3. その他の低迷

No.5 宋楚瑜(親民党主席)、N0.6 朱立倫新竹市長)、No.13 洪秀柱(国民党主席)、No.14 黄國昌(時代力量主席)、No.15 李登輝(元総統)

 

まずは、2018年で市長を退任するトップ2の処遇が焦点となるだろうか。

陳菊おばちゃんは高支持率を長期間維持しているが、やはり年齢という制約もあって、蔡英文政権の"駒"となるのが現実的なのかもしれない。

頼清徳は立派な次期総統候補となり得るが、蔡英文が2期務めるとなるとまだ先は長い。

他は高支持率+国民党の低迷を考えると、2022年まで市長に居座ることが可能と予想されるので当面は問題がない。

国民党は朱立倫が頑張らないと、展望が開けない。次期主席になると思われる3候補よりも10歳程度若く、国民党の未来は彼にかかっていると言っても過言ではないような気がする。

そして、時代の趨勢からして意外なのは、黄國昌の低支持率; 緑の間の路線論争(民進党と時代力量)が影響したと説明されている。民進党で限ってみれば彼の支持率は36%、不支持が46%。時代力量は75%。統計を見る限りでは、全体の48%を占める中立及び無党派層の支持率の方が共に15%と低く、彼の低支持率に直結しているように見える。

しかし、第三勢力の支持率が皆低いかと言うと、宋楚瑜という例外もいる。台湾省時代の好印象が大きい。蔡英文も敬意を払う; APECにも派遣された。

 

蔡英文政権について、政権の中枢にいる政治家の支持率は軒並み低迷しているが、年末の統一地方選挙まで粘ることが出来れば先が見えてくる。当然ではあるが、カギとなるのは内政; 改革を実行しつつ支持を得ることの難しさを実感しているに違いない。対米・対中関係という対処困難な仕事は半永続的に存在する; 大きく振り回されないことが重要であるが、失策のリスクも高く付いてくるので難しいところであろう。