台湾・香港 蔡英文/林鄭月娥

特筆書けることも少ないので台湾・香港とまとめることになった。

 

台湾・・・6月27日、蔡英文政権において最難関かと考えていた年金改革三法案が成立ー優遇利率18%が徐々に引き下げられることになった。十分な功績と言えるのであるが、満意度は30%以下。トランプに比べて公約をしっかり実行している(統計データはない)はずである。しかし、譲歩しているように見える姿勢が国民の支持に繋がらないのか、政策云々より強いリーダーが求められる世の中のようだ。

来年の11月の地方選挙を考慮に入れた行政院長の交代が予想されるが、高支持率を背景に持つ陳菊(Chen Chu)ー頼清徳(William Lai)の二択以外にあり得ない。小笠原欣幸は自身のHPで以下のように述べている「陳菊と頼清徳は行政院長候補としてよく並べて論じられるが、蔡英文の権力関係から見ると意味合いはかなり異なる。どちらのカードを使うかで蔡政権の性質も変化していく」。両者の対中姿勢は大きく異なると感じている、しかし知識の不足故に"権力関係”という視点から読み解くこと出来ないのが残念である; 両者共に最大派閥新潮流派だったはずだ。頼清徳が新潮流派の長老から説得され9月に行政院長に就任するという噂は総統府が否定している。

 

香港・・・林鄭月娥行政長官になって現在の政治の争点は、高速鉄道開通(香港~広州)に付随する出入境管理施設を巡る中国と香港「一国二制度」に関わる問題である。おそらく最終的には香港政府が提案している通り(香港側のターミナル駅に中国側の出入境施設も併設する)で解決されるだろうが、民主派が反発している。先月新たに劉小麗、姚松炎、羅冠聡、梁国雄の議員資格が取り消された。ますます、「親中派」と「民主派」の対立が激化しているように見える。前々から香港の政治は行政長官を中心とした政府及び親中派を中心に動かされ、失政も多いとの評価が一般的であると思う。しかし、民主派も程よい譲歩が出来ないために、大概は決裂という形で終わってしまう。そして現状に不満を持つ若い世代と「本土派」や「自決派」と言った勢力が台頭してきた。香港衆志(黄之鋒Joshua Wong と周庭Agnes Chow)はもはや「一国1.5制度」であると日本にアピールしていった。習近平国家主席は台湾と香港の独立論には強硬な対応をする。日本の数少ない香港専門家の意見をまとめると、お先真っ暗、変革の要素が見当たらないとまで言ってもあながち誇張ではないかもしれない。楽観的に見れる点をあげると、現在世界経済が安定的であるが故に、香港の成長率も昨今高めである。

中国 党大会の行方と経済情勢

次期首相候補と目されていた孫政才が失脚した。堅実さが売りで大胆さに欠けるといった特徴は、薄熙来の後継として毒された思想・根深い腐敗を打破するに、役不足だったようである。現執行部は彼を汚職で失脚させる代わりに、昇格させず政治局委員として残すことも出来ただろう。薄熙来は失脚させる必要があった; 影響力と後ろ楯の有無という点で両者の事情は異なるからだ。

しかし、習近平は波紋を呼ぶことを厭わず首を切ることを決断→早めに陳敏爾に重慶市トップに据えることを選んだ。それ程重慶市の現状に不満があったということなのだろうか。19大で選出される政治局委員に関しては習近平派が大勢を占めることが予想される。つまり、政治局1枠のために孫政才を失脚させたというのはお門違いだと思う。そして陳敏爾が政治局常務委員にジャンプアップする可能性も低くなった。まさかのリリーフではないでしょう。

なるほど、中国の権力争いは複雑怪奇…。

 

ともあれ孫政才が政治局常務委員になる可能性が消え失せたことは間違いない。

報道をまとめると、

100% 習近平

80% 李克強、汪洋、栗戦書

50% 王岐山、王滬寧、趙楽際胡春華、韓正

少なくともここまでで6人は選ばれるはず。

(上記で常務委員9人という選択肢はないか)

残る候補としては李源潮、張春賢、陳敏爾。陳敏爾を隠れ蓑としたまさかのダークホースXのジャンプアップの可能性もある。

まだ北戴河から漏れ聞く有力な話はないと思われる。そろそろ蓋然性のありそうな報道が出てきてもおかしくないと思われる。

 

さて上半期の経済情勢についてレビューする前に、リコノミクスと供給サイドの構造改革の違いについて考えてみたい。昨年から供給サイドの構造改革が最重要政策の1つとなったが、従来のリコノミクスと何が違うのだろうか。

李克強経済学 http://www.china.org.cn/business/2013-07/24/content_29516827.htm

1. No large-scale stimulus package

2. Deleveraging

3. Structural reform

供給サイドの構造改革 https://www.youtube.com/watch?v=0K5twDLlb80

1. Cut industrial capacity

2. Reduce housing inventory

3. Cut leverage

4. Lower corporate cost

5. Improve weak economic links

Q. 何が違いますか? A. 分かりません。

しかし、物事には理由がある訳で、なぜ習近平が首相の専権事項である経済政策の主導権までも握ろうとする必要があるのか。津上俊哉は李克強は実は「安定成長派」であり習近平こそが「改革派」であると主張する。田中修は、1. 国有企業のウェイト 2. イノベーションに対する考え方、について習近平李克強には歴然とした差があると言う; つまり習近平は党ー国有企業を重視する、李克強は公民ー民間企業を重視すると説明した。おそらく双方とも正しいと思う。ただ改革という側面から字面にするだけでは浮かび上がりにくいギャップが両者には存在するのだろう。

 

ところで、なぜリコノミクスと供給サイドの構造改革の違いについてレビューしようと考えたのか。筆者の考えでは、上半期の経済情勢に両者のせめぎあいが見てとれたように感じたからだ。

3つの指標を取り上げる。第21回中国塾の資料を参照

・都市固定資産投資ー1-6月期、前年同期比 8.6%増

・インフラ投資ー1-6月期、前年同期比 21.1%増

・不動産投資開発ー1-6月期、前年同期比 8.5%増

党大会の前だけあって、安定重視ー投資の活性化が見て取れる。しかし、習近平路線に反していないかという疑問がある。細かく見ると投資増は今年3~4月をピークを迎えている→その後若干の減速がみられるのだ。そして今、引き締めを図ろうとしている。安定を重視するならば、今現在こそ好景気であることが必要ではないのか。若干ピークがずれている?これが何を意味するのか→国務院・李克強側が意図的に支出を増やした可能性がある。つけは信託貸付 11.7%増→新たな理財商品流通の可能性。習近平が一番嫌がるリスクを李克強がとったという見方は穿っているだろうか?

下半期、党大会の人事他の動向から特にマクロ経済政策に関して示唆に富んだ話があればいいなと思っている。

 

 

北朝鮮 核と経済の並進路線

トランプ大統領が"with fire and fury"と言った後、朝鮮人民軍がグアム沖へのミサイル発射計画を明らかにしました。直接的な因果関係があるかは未証明ですが、緊張のレベルがまた一段と上がったことは事実でしょう。

専門家の話を聞いても、北朝鮮の核・ミサイル開発が想像以上のスピードで進行していることは間違いない。エンジン開発、核の小型化、再突入の技術に至るまで数年前まではまだ猶予期間があると考えられていた。しかし、今やもう差し迫った脅威として捉えられている。日本や韓国は以前からスカッド・ノドンの脅威にさらされており今更感もなくはないが、対アメリカとなると事態は根本的に異なり、昨今のような情勢となる。北朝鮮金正恩体制が核・ミサイル開発は止めることはほぼ100%なく、凍結で「対話」に合意することも今のところ想定できない。北朝鮮はアメリカが本格的な攻撃を決断することはできないと足元を見ている。そして、それは残念ながら正しく、北朝鮮は全く譲歩する必要性を感じていない。国際政治に変化がないと仮定すれば、北朝鮮は確実な第二撃能力SLBMの発射能力を持つまで; 結局のところ原子力潜水艦が最後の課題となるだろうが、開発を続けていくことになるだろう。

 

今までの国連の制裁決議は核・ミサイル開発に全く影響していないという意見がある。1. 統計に表れない東北三省と北朝鮮の交易を防ぐことが出来ていない。2. 表の交易ラインを塞ぐことによって、むしろ裏のルートの発達を誘発した。3. そもそもミサイルの部品を見ても各国様々な民生用の輸入品が有効活用されている。この中で一番重大なのは北朝鮮中枢を結ぶ裏ルートの開発が進んだことだろう。焦点は今後、北朝鮮が核実験を行い、中国が石油を遮断したとしてダメージを与えられるだろうかといったところか。もちろん、制裁決議が国家というアクターの一致団結を示す場として機能していることは否定しない。そして、国際社会としても制裁を強化していくこと以外の方法がないのだろう。

 

北朝鮮経済に関して、韓国銀行は2016年の成長率を3.9%と見積もった。昨年が若干のマイナス成長だったのでその反動もあった。しかし、実態を表しているかはどうも怪しいと感じている。市場はもはや必要不可欠なぐらい発達している。それは5年前の時点で、つまり金正日の死去の時、市場閉鎖期間を短縮せざるを得なかったという点からも明らかである。地道なフィールドワークからコメの価格や他の消費財の流通について調べている専門家の論文を読む限りでは、北朝鮮経済に混乱は見られない。どこまで統制がとれているかという問題はあるが、大きな亀裂は報じられていない。今後、スピードは別にして、北朝鮮経済が1990年代の苦難の行軍の再来のような苦境に立たされることもなく、成長を続けていくだろう。

そしてその過程の中で、北朝鮮の市民生活に変化が出るのか、それとも強固な統制社会が堅持されるのか、その程度しか事態の打開に関して展望は持てないのだと、悲観的に考えれば、斯様な結論になるのである。

 

韓国 社会矛盾と政治経済

一連の政治スキャンダルで財閥は巨額の寄付を行ったと非難され、サムスンの李在鎔副会長は懲役12年を求刑された。財閥3世ともなると1代目の苦労もほとんど記憶になく、傲慢性やモラルハザードが育つ一方、忍耐力や経営能力すら欠けかちであるという弊害が目立つという。政府及び財団への寄付自体については、歴代続けて行ってきた暗黙の了解であり、政府の配慮を得るために必要不可欠であったという見方も一理ある。しかし、李在鎔副会長にしても出社したのは1年に2回だったとか12回だったとか言われれば、国民の不興を買うのは当然であり、それらが考慮された地裁の判決は見物である。サムスンはグループ会社の再編と持ち株会社への移行を断念する傍ら、配当引き上げと自社株買いを行い、株主の機嫌をとっている。

 

韓国経済は好調を保っている。世界経済が安定→特に輸出が増えて一番恩恵を受けるのは貿易依存度の高い韓国であろう。半導体やディスプレイで圧倒的なシェアを持ち、ここ数年は大きな利益をあげている。一般的に半導体の周期は3~5年と言われ、新興国特に中国のキャッチアップという脅威もあるので繁栄が長続きするとも限らないが、中長期的に見ると半導体の需要は右肩上がりが予想されている。つまり、自浄能力と社会の需要にあった適応能力さえ維持できれば、当分の間サムスン王国(+LG?)は続くのかもしれない。

 

著しいスピードで先進国の仲間入りを果たした韓国ではあるが、社会矛盾という副作用もまた大きい。GDPは世界10~15位、一流企業を抱え、社会インフラは整い、治安も悪くない。一方で、高齢化と社会福祉の問題、若者の高い失業率、広がる格差、乏しい技術革新、政経癒着。これらの課題に大統領は一つ一つ向き合っていかなければならない。

文在寅大統領もまた財閥改革を標榜しているが、現実にはサムスングループの解体などはとてつもないリスクを伴う; 言ってしまえば出来るはずもない。現在のところ、財閥との距離を測りかねているようにも見える。所得税法人税の引き上げを行ったが、莫大な利益を上げる財閥に大きな影響は出ず、特に競争力の低下が起こるとは予想しない。しかしまた一方で現状に大きな変化をもたらすことも不可能なので、果たして高い期待をもった国民が納得するのか否か。公約に掲げた81万人の雇用創出などは対処療法に過ぎないと言われる。注目は予定される最低賃金の大幅な引き上げがいかなる化学反応を及ぼすのか、2012年~22年にかけて2~3倍の変化があるはずだ。

 

北朝鮮に対しては「対話」を呼びかけているが、成果は一向に出ず厳しい状況である。しかし、いくら進歩政権と言えども、事態をただ楽観的に考えていたはずもなく、今後も粘り強く「対話」を提唱し続けるのだろう。この路線は韓国の利益にかなっていると思う; 1. 彼らには中国と敵対する力はない。2. 最終的に統一も考えなければいけない立場。3. アメリカにも「対話」を必要と考える学者は多い。圧力のみで北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止できるのかと言えば、答えはノーでしょう。短期的に体制転換が起こり得ないと仮定しかつ北朝鮮に変化を期待するならば、それは韓国が行おうとしていたような赤十字なりの支援から民主主義の懐の大きさアピール→徐々に地方・民間へと拡散させることによって、下からの革命を誘発するもいう選択肢が一番実効性を帯びる。将来における安定的な統一政策も志向しやすい。

 

韓国の安全保障や政治経済を分析することは難しい。どの国においても情勢を理解するためには当該国の国民性を理解することが不可欠であるが、韓国においては特に大切であると感じる。例えば安全保障環境に関して、日中間において意見が異なっていても、国際政治を見る角度が似ているのでお互いの主張は理解しやすい。ただ、韓国においてはそもそもの前提から異なるので話が噛み合わないことも多い。市民レベルにおいても日本国民と似ているようで異なるのが韓国だ。日本の報道で頻繁に「国民情緒」などの言葉をよく聞いたが、それが唯一の韓国国民を代表する特徴であるわけでもない。

次なる目標は、今一度原点に戻り韓国と言う国を理解することにあるかなと思っている。

日本 内閣改造と成長戦略

森友・加計問題がヒートアップし、内閣支持率が過去最低の35%(NHK)を記録したところで1年ぶりの内閣改造という手を打った。

 

野田聖子の政権入りという予想は93年組という視点から比較的簡単であったと思うが、河野太郎はノーマークでした。個人的に直前に至るまで重要閣僚の外務大臣のポストが決まらないというのは、政権のビジョンの欠如もしくは内閣主導の首脳外交を意図していることを示しており個人的には遺憾な次第。他、霞が関の細かい事情を知らない私は、女性ポストをどう扱うのかという点でまさかの片山さつきもあり得るかと踏んでいたが、おそらくこういう予想はただの阿呆なんだろう。

印象として岸田派が多い。林芳正小野寺五典といった個人個人で見れば全く意外ではないのだが、ここまでの譲歩は正直予想外。石破さんと親しい報道された梶山弘志小此木八郎は菅官房長官に近いイメージ。江崎鉄磨は歴とした二階派というかお父さんや創政会の立ち上げといった往年の"修羅場"を思い出す。世襲組は有利だなと思うのはやはりお父さんを知っているというか、現下の外交で河野外務大臣が述べている通り、認知度が高めだ。副大臣政務官ポストの配分は従来と変わらず。ヒゲの隊長が外務副大臣になった。河野&佐藤(&中根←知らない)で意思疎通は大丈夫なのか?

さて河野太郎とはどのような人物なのだろう。信条・思想etc. この点に関して、いわゆる五大日刊紙の記事に注目していたのだが、特に核心を突いたような報道はなかった。彼が安倍外交に追随するか否かはともかく、彼自身がどのような外交をイメージしている政治家なのかいまいち追いきれていないと感じる。残念ながら当分の間は対米・中・韓関係を受動的に精査するということになるだろう。

 

安倍仕事人内閣は経済第一と銘打った。とは言っても打てる金融政策はほぼ底を打ち財政政策には限りがある。となると成長戦略に力を入れるべきなんだが、女性活躍→一億総活躍→人づくり革命とネーミングを変えつつ労働力の確保(?)に向けた政策をアピールするのみで、全要素生産性を高めるための技術革新の奨励だとか、潜在成長力の核となる政策を打ち出すことに失敗している。将来の生産年齢人口の減少に対する根本的な解決策は出生率を回復させること以外にあり得ない。まず、人づくり革命というならば国民が子どもを産みやすい環境の整備に全力を尽くすべきで、例えば教育の無償化は良い試みであると考える。お隣の国の成果はともかく、女性家族省を立ち上げるなども対策の1つとなるだろう。そしてベクトルを将来の先取りに向けることが大切ではないか。構造改革が何より重要であると思う。メディアの報道が全てでないと願いたい。

 

そして気になるのはマイナス金利政策の出口であろう。人工的に作られた市場と日銀による国債の貯め込みはおそらく、長期的に持続可能ではない。銀座の一等地で地価の上昇が見られたりなどはあるが、かつてのバブルの再来もまた想像に難しい→そういった意味においてはマイナス金利も悪くないのだが、問題はFRBなりECBが引き締め目的に金利を引き上げていった時、日本にも利上げ圧力が高まることだ。マイナス金利への固執は大きな反動を生む。円と債券相場の暴落が起これば、日本はどうなるのだろう。日本においては債権者もまた大半が日本国民であり問題ないという考え方もあるが、納得できるようで納得できない話でもある。国民と国家は一心同体であると言えばそれまでなんだが。

最近、そもそも物価上昇率2%という目標自体が正しいのかという議論があるが、それが間違っているとは思っていない。

しかし、消費者物価指数もまた曲者であり、例えばバブル期も最後まで上がらなかった。当時も企業や法人とは異なり個人は一部を除いて出費増に慎重だったという見方もある。需要が高まらなければ物価が上がることもない。また、値下げ競争に対する日本企業の優秀性といった要因もあると思う。そしてもちろん、為替とエネルギー価格によっても大きく左右される。

政府と日銀には上手く落としどころを見つけなければならない。今は誤ったシグナルを出せないがために選択肢も狭まり、行き詰まっているといったところだろうか。

 

昨日、知り合いと日本経済について話をしている時、数多くのアジア特有の問題; 日本に遅れて中国・韓国も高齢化と財政の悪化が予想されていることを踏まえて、停滞はアジアの思想文化が元凶なのではないかというまた元も子もない1つの結論の候補が出た。キャッチアップの終わりの段階を向かえ、中国はe-コマースの分野で韓国は半導体の分野で、現在は好調といえるかもしれない。しかし、問題はキャッチアップを越えた後の成長であって、両国は成長率は低下する一方であろう。もちろん現在の日本に比べると随分と高い水準であるともいえるのだが、バブル期と比べ相対的に悪くなった今の日本の一人当たりGDPにすら追いつくことは難しい。そしてアメリカは長期的な高成長を享受している。ヨーロッパも低成長であるが、生産性に優れている社会だ。これらの違いは何に起因しているのだろうか。希望が持てる1つの結論の候補はイノベーションの駆動力であり、内閣にはぜひともイノベーションをアピール→前に進めてもらいたい。

 

中国 「一帯一路フォーラム」

北京で「一帯一路フォーラム」が開催されました。G7で首脳が参加したのはイタリアだけだったものの、ロシア・トルコ・ASEAN諸国を中心に29ヶ国の指導者が参加、約130ヶ国が代表団を派遣し、国連事務総長世界銀行総裁も名を連ねた。アメリカも直前に代表団派遣を決定し、日本からは二階俊博幹事長等が参加した。

「一帯一路フォーラム」は今年、中国が最重要視する外交イベントと位置付けられていて、成功が義務付けられていた国際会議であったと言える。開幕直前に北朝鮮がミサイルを発射・しかも約30分間飛行したということで、メンツは潰され・報道は希釈されるハプニングがあったが、全体としては万事順調・中国の報道は一帯一路一色であり、習近平国家主席指導力が如何なく発揮されたことを国民に示すことが出来た。第19回共産党大会に向けて、素晴らしいスタートダッシュである。

 

そして個人的に2点、大袈裟に言うと衝撃を受けた。

 

1. はじめに、「中国はもはや先進国である」ということである。

細かい定義を無視することを条件に、先進国を大国もしくは地域覇権国と言い換えても良い。もちろん、農村(国内)を鑑みれば、中国は一部発展途上国のレベルに留まる。しかし、これほどの国際会議をどのくらいの国々が主催できるかということを考えてほしい。日本やドイツでも難しいのではないか。ADBは影響力を減少させ、AIIBが勢いを増してきている。2010年に中国は世界GDP2位になった。そして今や、毎年の政府活動報告は、オーストラリアのメディアに自国の政治・経済よりも大切であると言わしめるまで重要性を帯びている。世界の成長の数十パーセントを中国が牽引しているという事実は数年前から明らかであった。

しかし、昨年G20を成功裏に終えたとはいえ、中国自身が枠組みを作り・主催する国際会議の成功という結果は、誇張を承知で言うと、パワーシフトの始まりとも解釈できる。これまでS. ストレンジの言う「構造的パワー」という意味ではアメリカが世界を牛耳ってきた。しかし、そこに今中国が加わろうとしている。国際秩序は新たなステージを迎えているのかもしれない; 良し悪しはともかく、アメリカ1強から本格的にG2へと移行する転換期なのかもしれない。

 

2. 上記と関連する事柄として、アメリカと日本がAIIBに参画するシグナルを送り始めたという事である。

アメリカはTPPから離脱を宣言し、100日計画の途中経過と成果を発表→「一帯一路フォーラム」に代表団を派遣することを決定した。従来のD. トランプの公約とは何だったのかという変貌ぶりで、AIIBに参加することも厭わない方針のように見える。

そして、日本でもAIIBに対する姿勢に変化が見られるようになってきた。二階さんは従来からAIIBに参加しても良いと言う立場であったが、少なくとも政府は慎重な立場を崩していなかった。もちろん今でも、"慎重"であると言えるのであるが、「条件が整えば」という言葉に込められてるニュアンスから、参加のハードルを下げたコメントが最近発信源から報じられているのである。

例えば、安倍首相はCNBC・BSジャパンのインタビューで「疑問点が解消されれば前向きに考える」と述べた。林芳正農水相は「今まではガバナンスが効いている・検討すべき」と発言している。事例が多数あるわけではないが、方針を転換させる空気が醸し出されている。今まで解釈次第ではあるが、安倍政権は中国を封じ込める外交を行ってきた; 安保ダイヤモンド構想やTRIMは一種の中国包囲網でもあった。しかし、もしAIIBに参画するとなれば、これらの外交方針は一部軌道修正が図られたと判断しなければならない、そういった意味で衝撃なのである。

 

・まとめー日中関係の今後の行方は?

二階幹事長は中国でかなりの好待遇を受けていたように感じました。「一帯一路フォーラム」閉幕後とはいえ、習近平国家主席との会談をセッティングされた。また中国の報道では、二階幹事長の中国訪問がかなりフォーカスされている; 公式的には彼は副首相級であり、日本では控えめな報道がなされているのと対照的である。安倍首相及び官邸は内政の諸事情を考慮に入れなければならない訳で、むやみに妥協したようなイメージを持たれるのはマイナスイメージである。そういった意味で報道が多少抑えめになるのは仕方ないと思うが、地味に阿吽の呼吸が出来ているのではないか?というのも気になるポイントだ。楊潔篪国務委員の訪日とその後の動向次第では日中関係も大きな転換期となるのかもしれない。今年ー日中共同声明45周年であり、来年ー日中平和友好条約40周年を迎える。つまり、安易な結論を出すならば"融和"が予想されるが、そう首尾よく事が運ばない諸条件を併せ持つのが日中関係であるとも言える。

 

韓国 文在寅大統領

大方の予想通り、文在寅が大統領になりました。

情報を追加し、所見を述べます。

 

1、選挙結果について

所々で「地域主義の時代が終わった」との論評を見たような気がしますが、僕自身は保留としておきたい。確かに三金(YS DJ JP)の時代と比べ、地域主義の影響は弱まっているといえるが、"この御時世においても"大邱慶尚北道では洪準杓(自由韓国党)が一定の差をつけて1位になっている。そして、湖南における洪準杓の支持は数パーセントにしか満たない。ただ長期的な流れとして、三金という個人の影響力がそがれていき、地域主義色が薄れていくことはまず間違いないと見てる。

実は自由韓国党もこの大統領選挙の勝利者と言えるかもしれない。彼等は次回の選挙が2020年であることを見通し、あくまで受動的な立場から今回の大統領選挙に臨んだはずだ。もし候補者を擁立できない or 劉承旼(正しい政党)に負けるといった事態が起きたならば、政党=保守の瓦解が見込まれた。しかし彼等は94議席に見合う得票率を得、見事2位まで上り詰めた

一方、安哲秀(国民の党)は中途半端に終わった。どの年代・地域においても彼はナンバー1となり得なかった。まず、金大中派と国民の党の基盤である全羅道文在寅(共に民主党に完敗しているようでは手合い違いである。昨年の総選挙では国民の党が大勝した地域だ。そして、地域別ではこの光州・全羅南道における30%というのが最多となっている。安哲秀はどの地域においても大よそ15%以上の支持を集めた; もっとも文在寅は全地域で20%以上の得票率を得ている。前回の大統領選挙では安哲秀旋風を巻き起こし、主に若者・大学生から絶大の支持を集めたと言われていたが、5年後の今、彼は20代(17.9%)から最も支持を得られなかった。そして、それらの支持は劉承旼(13.2%)と沈相奵(12.7%)に流れた。

劉承旼と沈相奵(正義党)は共に6~7%前後の得票率で敗退している。地味に興味深いのは沈相奵が全地域で4%以上の支持を集めたことである; そして、最低が既存の革新勢力が強い全羅南道の4.01%というのも皮肉な結果と言えようか。両者ともTV討論で比較的評価を得た候補だった; その結果が上で述べた20代の高評価につながったのかもしれない。ただ、特に沈相奵に流れた票はまともな候補者がいないといった消極的な投票行動の結果である可能性も考えられる。

60代・70代以上は洪準杓を支持した。しかし、今回の選挙においては50代まで文在寅を支持し、従来よりも進歩勢力の支持範囲を伸ばした。現状の若者の就職難が親世代に影響を与えたのかもしれない; ここで気にかかるポイントは、朴槿恵スキャンダルが人々の投票において第一義的な影響を与えたのか否かという点であるが、YesともNoとも言いかねる絶妙な結果がでた。この点については専門家の意見・研究を待ちたいと思う。

 

2、文在寅という人物評に関して

特に、大統領選挙当日から当選後2日にかけては、日本の新聞も文在寅新大統領誕生を今まで以上に大きなトピックとして報じていたような気がする。正直、ここまで熱くなる必要があるかと思っていたが、12日金曜日辺りから一気に分量が減った。今度はここまで一気に冷めるものなのかと感じた。TVは面白おかしく報じているケースも多い; 文在寅の家と間取りまで報じる必要はないでしょう。

産経新聞は報道姿勢として非常に"楽"だったのではないか。まず左派政権が見込まれ、妥協姿勢を見せようとも、彼らのお眼鏡には進歩勢力であることに変わりがないため批判一色に染めることが出来る。僕も例えば、新しく秘書室長に任命された任鍾晳氏について全く知らず、今日昨日の報道に依存する訳であるが、彼はなかなかの左派である。流石に林秀卿の北朝鮮派遣に関わったとなると、本物の左派認定をせざるを得ない。

日本でトピックになる慰安婦問題北朝鮮政策に関しては、専門家の方々が大枠で一致した考えを持っているようだ。つまり、慰安婦問題に関しては、解決及び今後の方向性を決めるのに一定の時間が必要→はじめに慰安婦合意の検証委員会を立ち上げるのではないかという考えが優勢であり、北朝鮮政策については、早々に南北首脳会談を開催することは難しい、THAADに関しても一方的に撤回を決断づけるにはリスクが高いと思われるという意見が多数派である。北朝鮮政策に関しての注目点は、いわゆるムーンライトポリシー(文=Moon-light policy)なるものが; つまり文在寅大統領がどこまで自主性を発揮しようとするかである。そして、側近含め左派勢力の影響力と保守陣営の反発にいかに対処するか北朝鮮政策に関しては折衝・舵取りが難しい。

今のところは順調な滑り出しを見せているようにみえる。Anything but 朴槿恵の方針は世論の広範な支持を得られるからだ。秘書官と昼食を食べます、食堂でも食事をとります、上着は自分で脱ぎます、仁川空港で関係者と対話を行いますetc。まだ就任5日であり、保守と進歩が分裂するような爆弾を放り投げることはしていない。就任後すぐ、鄭宇沢院内代表(自由韓国党)と会い、統合を求めた。国会運営には自由韓国党のサポートがほぼ不可欠であると言える; 共に民主党+国民の党+正しい政党でも180議席に満たないからだ。

崔順実ゲートから大統領選挙まで、韓国国民はそして一部の日本メディアのダイナミックコリアにかなり沸いたが、大切なのは文在寅大統領がどのような政策を実際に行っていくのかという事である。トランプ大統領の誕生が現実味を帯びるに連れ、報道は彼のAmerican Firstに大きな懸念を示したが、トランプ大統領は中国の製品に45%の関税のかけていない。彼が選挙中にある種の公約として発した政策の中にはすでに撤回(?)されたものもある。文在寅大統領についても、もちろん彼の政策志向・イデオロギー的側面に目を向けることは大切であるが、改めて事の本質は彼がどのような政策を実行するのかということである。文在寅大統領が内政の諸矛盾を解決できることを望んでいる。